肥満と胆石症(たんせきしょう)には密接な関連性があります
本稿では、肥満により胆石症を発症するメカニズムを解説します。そして、胆石症がある患者さまへGLP-1作動薬(リベルサス など)をダイエット目的で使用すると実は恐ろしい副作用が発生してしまうことがわかっているので、その部分に関しても解説しますね
肥満と胆石症には密接な関連性があり、特にコレステロール胆石を引き起こしますが、メカニズムは以下の通りです
1. コレステロールの過剰生成
•肥満の人は体内でコレステロールを過剰に生成しやすく、胆汁に含まれるコレステロールの濃度が高くなります。胆汁に溶けきれないコレステロールが胆のう内で結晶化し、やがて胆石(コレステロール胆石)を形成します
2. 胆のうの働きの低下
•肥満の人は、食事後に胆のうが適切に収縮せず、胆汁を十分に排出できないことがあります。これにより、胆汁が胆のうに長時間留まり、胆石が形成されるリスクが高まります
3. 高脂肪食との関連
•肥満はしばしば高糖質・高脂肪・高カロリーの食生活と関連しており、これもコレステロール胆石のリスクを増加させる要因です。特に動物性脂肪を多く含む食事は、胆石症のリスクを高めることが知られています
4. 急激な体重減少との関係
•肥満の人が急激にダイエットを行うと、体内で脂肪が急速に分解され、その結果として胆汁の中のコレステロールが増加し、胆石のリスクが高まることがあります。急激な減量は胆石症の重要なリスク要因です
5. インスリン抵抗性
•肥満はインスリン抵抗性を引き起こしやすく、これはまた胆石形成に関与する可能性があります。インスリンが胆汁内のコレステロール濃度を高めることが知られています
いかがでしょう?
肥満はさまざまなメカニズムを通じて胆石症のリスクを高めます
また、本邦では正式には認められていませんが、ダイエット目的や美容目的に一部でGLP-1作動薬(リベルサス など)が非正規に流通しています。しかし、胆石症に罹患している患者さまへダイエット目的にGLP-1作動薬を使用してしまうと、急性閉塞性胆嚢炎や急性膵炎などの重篤な合併症を高頻度に発症してしまい、最悪の場合は開腹にて外科的治療(手術)を行わなければならない場合が多くあります
ワタシも勤務医時代に胆石症を有する重度の糖尿病患者さまへGLP-1作動薬を使用していましたが、高頻度に急性胆嚢炎や急性膵炎を発症する合併症に遭遇したため、同僚の外科医と常に連携して対応していました
そのため、当院ではダイエットの目的でこのような危険な副作用のある薬剤をすべきではないと判断し、ダイエット目的でのGLP-1作動薬(リベルサス など)は一切使用しておりません
ダイエット治療はダイエット治療医との二人三脚での共同作業であり、尚且つ“安全性”が担保されなければならないと思います
当院では、“安心安全なダイエット治療”をモットーに患者さまお一人お一人に向き合ってまいります